3.特徴を持つ人型ピクトグラムの典型の抽出

本研究では、『ピクトリアルシンボル・ハンドブック』所収の第一部のピクトグラムの初出版である1942年版のシンボル集(図2)を、資料として主に利用した。収録されたピクトグラムが利用されていた同時代の印刷資料を調査することで、まずデザインの意味を理解し、そのうえで特性を取り出し、人型の基本的な分類を試みた。その結果、1)標準的ピクトグラム、2)基礎的ピクトグラム、3)展開ピクトグラム、4)劇化ピクトグラム、以上の四つに分類できた。また、それらに5)抽象的ピクトグラムを加えた。以下、それぞれの分類について要約説明する。

図2 1000 pictorial symbols, 1942.

1.標準的ピクトグラム

資料調査の結果、1935年9月以降に特に合衆国政府の出版物で継続して利用されたピクトグラムがまず含まれていた。モドレイのみならず複数の組織でデザインしたピクトグラムでもある。そこで、これを同時代の米国の「事実上の標準的」シンボルと位置付けた。

2.基礎的ピクトグラム

標準的ピクトグラムとほぼ同じであるが、細部が異なるデザインのピクトグラムが認められた。標準との大きな違いは円形の頭部であり、この特徴はモドレイの用いるピクトグラムのほぼ全てに認められた。そこで、このピクトグラムを基礎的ピクトグラムとした。

3.展開ピクトグラム

基礎的ピクトグラムには服装や装身具に加え、姿勢や動作などが加えられ、多くは統計図に用いられている。そこで、基礎的ピクトグラムからの展開という意味で展開ピクトグラムとした。

4.劇化ピクトグラム

ピクトリアル・シンボルに収録されていないピクトグラムについても検討した。モドレイは1938年から「事実の劇化(dramatization of fact)」というコンセプトで統計グラフではない絵画的なダイアグラムや連続カートゥンなどにピクトグラムによるデザインを試みており、それらの描き方には、標準的、基礎的ピクトグラムとの関係を保ちつつも、独自の表現的な形式を有していた(図3)。そこで、これらの特徴を持つピクトグラムを劇化ピクトグラムとした。

図3「事実の劇化」に基づいたピクトリアル・ダイアグラム(1937)(左)および連続カートゥン(1938)(右)の事例。

5.抽象的ピクトグラム

モドレイのピクトグラムには確認できない「抽象的」なピクトグラムも同時代には利用されていた。そこで、Sociographics Philadelphiaという同時代の別のグループによるデザインから抽象的な「人」を表すピクトグラムを取り出した。

以上に、アメリカでのピクトグラムの展開の源泉にあたるアイソタイプの人型を加え、調査に利用するために、デザインの調整を行った。調整は、衣服などのアナクロニズムを回避することとそれぞれの様式がかけ離れないようにすることを心がけた。その結果を図4に示す。

図4 人型ピクトグラムの選定と調整

4.理解度調査

1.調査参加者

29名の知的障害者(男性15名、女性14名)に調査に参加頂いた。障害の細分は、知的障害13名、ダウン症11名、知的障害に自閉スペクトラム症を重複5名であった。年齢の内訳は、10代4名、20代6名、30代10名、40代6名、50代3名であった。なお本調査では、参加人数が限られたため、障害細分の比較は行わないこととした。

2.日常活動能力の評価

指標として、VinelandⅡ適応行動尺度を用いた。これは、0歳0ヶ月~92歳11ヶ月の適応行動(領域:コミュニケーション・日常生活スキル・社会性、下位領域に受容言語・表出言語・読み書き、身辺自立・家事・地域生活、対人関係・遊びと余暇・コーピングスキル、粗大運動・微細運動がある)を評価する検査である。対象者をよく知る保護者や支援者が、対象者について回答し、対象者の能力を評価することができる。本研究では、対象者が所属する福祉施設の支援員計32名に回答を頂いた。

3.わかりやすさの評価

期間: 2023年10~11月 

方法: 1対1面接法、順位法 調査時間: 約10分/人

100cm×150cmのスクリーンに7種類のピクトグラムがランダムに呈示された状態(視距離100cm、 視角43°)で、 調査参加者は、人としてわかりやすいピクトグラムについて、わかりやすい順に選ぶことが要求された。調査参加者にわかりやすいと判断されたピクトグラムは視界から外した後に、「今、目の前にあるピクトグラムの中で最もわかりやすいピクトグラム」を選んでもらうことで、調査参加者に混乱が起こらないようにした。

4.分析及び統計

⑴人型ピクトグラムのわかりやすさ

得られた結果に対し、ウィルコクソンの符号順位検定を行なった。各ピクトグラムの順位を検定し、エレメントや形態を比較することで、わかりやすさとグラフィックエレメントの関連について分析した。

⑵日常活動能力との関連

得られた順位結果を従属変数とし、VinelandⅡ適応行動尺度コミュニケーション・日常生活スキル・社会性の下位領域計9領域の評価点結果を独立変数とし、重回帰分析を行なった。本研究はわかりやすいピクトグラムの順位に対する適応行動尺度の下位領域の影響を調べる要因分析を目的とし、偏回帰係数Bをその影響力として参照することとした。

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デザインスタディ

  • 工藤真生
  • 伊原久裕