2026年4月に開校予定のむなかた福岡県立特別支援学校は、「一人一人の教育的ニーズに対応した空間づくり」「安心・安全な生活環境を提供する施設づくり」「時代の要請に配慮した施設づくり」「地域に開かれた施設づくり」の4つの基本方針に基づいて先進的な建築設計がなされた。校舎全体にわたり環境グラフィックとサインが展開されたが、環境グラフィックとピクトグラムのデザインは、工藤真生研究室(九州大学大学院芸術工学研究院)が担当した。ピクトグラムのデザインに関して伊原も一部協力し、これまでのピクトグラム研究の知見が部分的に活かされたことから、実現したピクトグラムのデザインについて報告する。
知的障害者のためのピクトグラムのデザインを専門的に研究している工藤氏は、全国半数の特別支援学校を対象として調査(n=630, 2013工藤)を実施した。その結果、標準化されたピクトグラムの様なシンボル形態は、知的障害を有する人にとって習得が難しいことが分かった。この結果から、ピクトグラムについては、以下のグラフィック要素を加えてデザインを修正することで、理解が高まるとしている:①動作や場面の文脈、②音や動きを表す効果線、③その場所を象徴する人物(n=355, 2014,工藤)。ただし、ピクトグラムのなかでも「お手洗い」や「非常口」ピクトグラムについては発達と共に習得できることも明らかになっている(n =355, 2014, 工藤)。
以上の知見に基づき、同学校のためのピクトグラムをデザインするにあたり、わかりやすさを高めるうえで有効なグラフィック要素として基本的に人型ピクトグラムを用いること、ならびにモノよりも運動・動作でピクトグラムが表す意味・内容を表現することとした。、また非常口ピクトグラムについてはJIS規格のものをそのまま採用し、トイレのピクトグラムについては、規格に基づきつつも、全体のデザインの統一性を考慮したデザインとすることとした。また、ジェンダーバイアスを避けるために、ジェンダーニュートラルなデザインとし、ピクトグラムが表す内容にできるだけ男女差が生じないよう留意することとした。

次に、具体的な人型の形態の創出にあたっては、コミュニケーション支援用ピクトグラムの試作において検討した標準、基礎(展開)、劇化の3つの類型を設定し、これらの類型ごとにピクトグラムをデザインし、3タイプのデザインを提案した(図1)。この実施デザインにおいて、課題となった問題のひとつは、「劇化」のタイプが頭髪を描くデザインであることから、ジェンダーニュートラルのデザインを導き出すのが難しい点であった。具体的な解決法として、中央分けの髪型を採用することとした。また、たとえば校長室を表すピクトグラムの人物像では、この髪型に加えて男女どちらにでも見えるような姿勢を表現した(最終的には校長室のピクトグラムは不要となった)。3タイプの提案を学校側に提示したところ、C案(劇化案)のデザインが採用された。

決定したC案を元に、視認性、統一性の観点から修正を加えて、最終的に図2に示す全22のピクトグラムができあがり、サインに用いられた。
註
- 工藤 真生(2014),知的障害者の理解度を包括したピクトグラムのユニバーサルデザイン,博士論文,筑波大学