このサイトは、グラフィックデザイン史の立場からピクトグラムの歴史研究を推進すること、ならびにその成果を現代のピクトグラムの課題に活かす方法を探ることの2つを目的に開設しました。この目的のために、このサイトは歴史研究とデザイン・スタディの2つのセクションから構成されています。

最初のセクション「歴史研究」では、ごく限られた時代と地域、すなわち1930年代から40年代にかけての北米を対象にします。この時期の北米、特にアメリカでは、オーストリアの社会経済学者オットー・ノイラート(Otto Neurath, 1882-1945)が中心となって構想し実践したアイソタイプ(ISOTYPE: International System Of Typographic Picture Education)の強い影響のもとに、ピクトグラムを用いた統計グラフである「図像統計」を用いたデザイン動向が興隆しました。その背景には1929年10月24日のニューヨーク株式取引所での株価暴落に端を発した大恐慌があります。1930年代に入ると失業者が増大し、社会経済的危機がいっそう深刻化しますが、その克服のために社会的経済的情勢を調査分析し、なおかつその問題を人々に伝える必要性から、その要求に応える技法として図像統計が注目されたのです。そして、この動向はやがて図像統計にとどまらず、同時代のイラストレーションやコミック、さらにはアニメーションといったアメリカならではの特徴的な視覚文化を取り込んだ表現領域として独自の展開を遂げてゆきます。歴史研究のセクションは、そうした状況を追跡します。

第2のセクション「デザイン・スタディ」では、歴史研究から得られた知見を現代に生かす道筋を探ります。知的障害者のためのコミュニケーション支援を目的としたピクトグラムの発展に、歴史研究が役立つのではないかと考え、障害学を専門とするピクトグラム研究者の工藤真生氏(九州大学大学院芸術工学研究院)と共同し、この目的のための基礎研究とデザインの試作を行ってきました。コミックやアニメーションなどへの展開を図った標準化以前のピクトグラムから、現代の標準化されたピクトグラムの限界を補完する可能性を引き出す試みを行っています。これから順次ドキュメントを追加していく予定です。

伊原久裕 (グラフィックデザイン、ピクトグラム研究)

※このWebサイトは、科学研究費補助金「アニメーションによる情報デザインの史的研究:アイソタイプ映画と同時代の情報映画」(基盤研究C:課題番号19K12660)、および「多様性に応えるピクトグラムのデザイン:標準化以前の歴史的リソースに着目して」(基盤研究B:課題番号22H03887および23K25141)の支援を受けて制作されました。