『知的障害とピクトグラム(絵記号):ピクトグラム標準化の歴史の見直しと知的障害者の理解度の視点から』(テキスト2-1)の考え方に基づき、日本産業規格として公開されているコミュニケーション支援用絵記号(JIS T 0103)(註1)を元に、コミュニケーション支援を目的としたピクトグラムのデザイン展開を試みた。基本となる目標は、標準化された絵記号と,ドロップスのようなより具象的なピクトグラムの間を架橋するシステムを提案することである。
テキスト2-1で述べたように、モドレイのピクトグラムの類型を表すスペクトラムを参考に、「標準」「中立」「展開」「劇化」の4つの類型を抽出し、わかりやすさの調査を行った。その結果、わかりやすさの度合いは「劇化」「展開」「中立」「標準」の順に並んだことから、人型ピクトグラムのわかりやすさには,白い円形の顔,白い手,髪の毛,手足の先端処理,動作,身体の非対称性のグラフィックエレメントが,有効との結果が得られた。この結果をふまえて、JISの人型に準ずる形態を「標準」と位置づけ、「中立」「展開」「劇化」については、中立と展開を合わせて「展開」とし、残りを「劇化」とした3つの人型タイプを新たに制作した(図1)。

3つのタイプの大きな違いは、頭部と腕先の処理にある。展開タイプ、劇化タイプはいずれも白い頭部と腕先を有しているが、劇化タイプには頭髪が加えられ、手先の表現にはニュアンスを持たせている。また、劇化については、モドレイのピクトグラムがそうであったようにマンガ表現を念頭において、ポーズに応じて微妙な曲線処理を加えることとした。
コミュニケーション支援用絵記号のデザイン原理では、いくつかの約束事が定められている。そのうち、基本となる黒地に白線による表現、および焦点となる要素を白で強調する原理については従わなかった。ドロップスのようなピクトグラムでは採用されておらず、それらと標準化絵記号との間を架橋するという前述の目的から判断してのことである。また、コミュニケーション支援用のピクトグラムにおいては、表情、効果線、吹き出しなどが重要な表現要素として用いられている。したがって、これらについてはどのタイプにも適用することとした。
制作にあたり、まず、知的障害・発達障害がある人の周辺で生活をする保護者・言語聴覚士・福祉関係者を対象にどのピクトグラムが必要なのかを確認するために、アンケート調査を工藤真生氏が実施し、工藤研究室の岡部咲花氏が集計を行った。この結果をふまえて、必要性の順位を把握し、この順位に概ねしたがって作成を行っている。今後、適宜アップロードする予定である。
註
- コミュニケーション支援用絵記号デザイン原則 JIS T 0103:2005, 日本規格協会、2005